解説A 地球環境史学研究の動向 地球環境史学会会員の貢献

地球環境史学会 PALEO 1, PL-000X, DOI: XXXXXX, 2013 年○月


東シナ海北部における冬季モンスーンの完新世100年スケール変動(中西ほか2012)

解説者:山本正伸(北海道大学)


Nakanishi, T., Yamamoto, M., Tada, R., Oda, H., 2012. Centennial-scale winter monsoon variability in the northern East China Sea during the Holocene」の解説

東シナ海の環境は黒潮強度と東アジアモンスーン活動に敏感に応答する.KY07-04 PC-1コアのTEX86HとUK37’の分析を行い数十年解像度の古水温記録を復元し,東シナ海の水理環境の東アジア冬季モンスーン変動に対する応答を議論した.浮遊性有孔虫のMg/Ca比が完新世を通じて温暖化も寒冷化も示さない(Kubota et al., 2010)のとは異なり,TEX86H水温は千年に0.28℃の割で徐々に上昇した.この水温上昇の原因として,黄海中央冷水隗の縮小か冬季海面冷却の弱化が考えられる.TEX86は1℃の振幅で100年スケール変動を示した.水温極小は3.0, 4.7, 6.2, 7.9, 9.0 kaでみられ,太陽放射量変動にもみられる約210, 250, 440年周期性を示した.復元された冬季モンスーン変動は過去2000年間の中国古文書記録の冬季の厳しさの記録と調和的であった.