No.2 (Oct. 12, 2021)

総説(PL-0010)

南米太平洋沿岸域における珪藻質堆積物(岩)の形成史

著者:小泉 格
公開日:2021年10月12日


抄録

総説(2021年2月25日受付.2021年10月8日受理)
タイトル:南米太平洋沿岸域における珪藻質堆積物(岩)の形成史
英文タイトル:Diatomaceous sediments along the Pacific coastal areas of South America and their evolution
著者名:小泉 格 Itaru Koizumi
著者所属:北海道大学 名誉教授
要旨:
南米の太平洋沿岸域は,アフリカ大陸南西部のベンガラ沖とともに世界の二大湧昇域である.ペルーからエクアドルにかけての沖合では,東風とコリオリ力が表層水を西へ転向させるので,栄養塩に富んだ深層水が沿岸湧昇流となって湧き上がるので,植物プランクトン(珪藻)が大量に繁殖して,珪藻質堆積物を形成する.沿岸陸−海域における珪藻質堆積物(岩)の産出層準の地質時代は,全球寒冷化による海水準低下と温度勾配の増強が極−赤道間の海洋循環流と沿岸湧昇流を活発化させた以下の4時期に形成された: (1)4000-3600万年前の全球寒冷化と生物圏の変化をもたらした「始新世末期事件」,(2)2400-1600万年前の珪藻群集の種組成入れ替えと分化を増強した「中新世前期氷河化」,(3)1400万年前の漸移的な深層水の寒冷化をもたらした「東南極氷床の成立」,(4)310-250万年前の中米海路の閉鎖による「北半球氷床の成立」.
キーワード:沿岸湧昇流,海洋循環,海生珪藻群集,始新世末期事件,南極大陸氷床,ヒマラヤ−チベット台地の上昇,中米パナマ海路,北半球氷床

総説(PL-0011)

赤道海流の変動史と南−北太平洋における珪藻質堆積物(岩)の形成

著者:小泉 格
公開日:2021年10月12日


抄録

総説(2021年6月18日受付.2021年10月8日受理)
タイトル:赤道海流の変動史と南−北太平洋における珪藻質堆積物(岩)の形成
英文タイトル:Development of the Equatorial Pacific Current and formation of diatomaceous sediments
著者名:小泉 格 Itaru Koizumi
著者所属:北海道大学 名誉教授
要旨:
東赤道太平洋は強い湧昇流と浅い水温躍層・西赤道太平洋は厚い混合層・水温躍層の発達・低い生物生産量などの暖水プールで特徴づけられる.西赤道太平洋の暖水プールは,インドネシア海路が960−650万年前以降の漸移的閉鎖後にインドネシア通過流となり,南太平洋の温暖・高塩分の水塊から北太平洋の寒冷・低塩分の水塊に変動して, 400−300万年前に熱帯域から高緯度域への大気輸送を減少させた.一方,東赤道太平洋の中米(パナマ)海路は,460−270万年前に南米と北米の衝突によって閉鎖され,310−250万年前に北半球へ氷床形成をもたらした.珪藻質堆積物は2300−1600万年前の赤道太平洋やカリブ海,大西洋の低緯度域に広範囲に分布しており,赤道循環流の影響が認められる.しかし,1600万年前以降の構造運動による海路の閉鎖や高緯度域の寒冷化などによる海洋水と大気の循環システムの変更によって,海生珪藻群集は低−中緯度域で消滅している.南東太平洋域の湧昇域では,3500−1800万年前以降に珪藻質堆積物が形成されているが,北太平洋中−高緯度域では1400万年前以降の寒冷化気候による海水準の低下を受けて珪藻質堆積物が形成し始めている.
キーワード:赤道循環流,赤道海流,西太平洋暖水プール,インドネシア通過流,インドネシア海路, 中米(パナマ)海路, シリカ転換,ラミナ(マット)状珪藻軟泥

奥付情報

誌名 PALEO
ISSN 2187-7580
発行頻度 年4回
巻号数 1年1巻
編集者名 地球環境史学会会誌編集委員会
編集委員会の構成等 委員長:佐川拓也,委員:入野智久・岡崎 裕典・高橋 聡・吉村 寿紘
発行 地球環境史学会(会長:村山 雅史)
発行者所在地及び連絡先 〒783-8502 高知県南国市物部乙200
     高知大学大学院 総合人間自然科学研究科 理学専攻内
価格(購読料)年間1000円
発行日 2021年10月12日