Shaari, H., Yamamoto, M., Irino, T., 2013. Enhanced upwelling in the eastern equatorial Pacific at the last five glacial terminations. Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology 386, 8-15.
解説者:ハスリザル・ビン・シャリ(マレーシア大学テレンガヌ校),山本正伸(北海道大学)
- 受付番号:paleoa20131028001
- 日本語タイトル:ハスリザル・ビン・シャリ,山本正伸・入野智久,2013. 過去5回の氷期末における東部赤道太平洋の湧昇活発化
- 要旨:
東部熱帯太平洋エクアドル沖サイト1239から採取された堆積物についてグリセロール・ジアルキル・グリセロール・テトラエーテル(GDGT)とアルケノンを分析し,それらの濃度とTEX86H値とUK37′値を得た.TEX86H値は通常海面温度を示すと解釈されるが,アーキアとハプト藻の生態を考慮すると,TEX86H値は混合層と温度躍層の積算水温を示し, UK37′は混合層の水温を示す.そのTEX86HとUK37′から求められた水温の差(ΔT)は湧昇強度を反映する.また,GDGTとアルケノンの濃度比が湧昇指標となりうることを示し,サイト1239でのそれらの指標値から,過去43万年間の5回の融氷期で東部赤道太平洋において湧昇が活発であったことを示した.この湧昇の活発化はペルー沖や南大洋での湧昇活発化と同調しており,南太平洋亜熱帯循環が強化したことを反映していると考えた.
Ohira, F., Yamamoto, M., Takemura, K., Hayashida, A., 2013. Response of vegetation in central Japan to precession during the last 147,000 years: A lignin record from Lake Biwa core BIW08-B. Quaternary International, in press.
解説者:大平深史(北海道大学)・山本正伸(北海道大学)
- 受付番号:paleoa20131028002
- 日本語タイトル:大平深史・山本正伸・竹村恵二・林田明,2013.過去14.7万年間の中部日本植生の歳差運動に対する応答:琵琶湖BIW08-Bコアのリグニン記録
- 要旨:
過去17.4万年間の中部日本の植生の氷期間氷期変動に対する応答を理解するために,TMAH熱分解GC/MS法により琵琶湖BIW08-Bコアのリグニン組成を分析した.リグニン量とC/V比は同調して間歇的に高値を示した.これは草本類に由来する有機物が琵琶湖に間歇的に流入したことを示唆している.最大の流入イベントは晩氷期に認められた.被子植物の裸子植物の寄与を示すS/V比は歳差運動周期を示し,琵琶湖の花粉組成変動や鹿島沖コアのリグニン組成変動と調和的であった.琵琶湖のS/V比は,歳差運動に対応した温暖乾燥気候と低温湿潤気候の繰り返しにより生じた冷温落葉広葉樹林と亜高山性針葉樹林,杉林の広域的な交替を反映している.
Yamamoto, M., Kishizaki, M., Oba, T. and Kawahata, H. (2013) Intense winter cooling of the surface water in the northern Okinawa Trough during the last glacial period. Journal of Asian Earth Science, 69, 86-92.
解説者:山本正伸(北海道大学)
- 受付番号:paleoa20131028003
- 日本語タイトル:山本正伸・岸崎翠・大場忠道・川幡穂高, 2013. 最終氷期北部沖縄トラフの表層水の冬季冷却の強化
- 要旨:
過去4.2万年間の東シナ海環境変化を理解するためにMD98-2195コアのTEX86を分析した.TEX86由来水温は氷期において大きく低下した.その低下は,有孔虫Mg/Ca比やアルケノンUK37'に由来する水温の示す低下よりも大きかった.これは氷期に表層水の強い冬季冷却があったことを示唆する.TEX86, UK37', Mg/Caはいずれも18-17 kaに最低水温を示し,この時期に寒冷水の生成が最も活発であったことを示唆する, 氷期には北部沖縄トラフでは寒冷水塊が発達し,沖縄トラフ北縁(男女海盆)には黒潮分岐水が完全には流入していなかったと考えられる.