Sagawa, T., M. Kuwae, K. Tsuruoka, Y. Nakamura, M. Ikehara, and M. Murayama (2014), Solar forcing of centennial-scale East Asian winter monsoon variability in the mid- to late Holocene, Earth Planet. Sci. Lett., 395, 124-135.

解説者: 佐川拓也(九州大学)

  • 受付番号:paleoa20140513001
  • 日本語タイトル:佐川拓也,加三千宣,鶴岡賢太朗,中村有吾,池原実,村山雅史,2014.太陽活動の変化によって引き起こされた完新世中後期における東アジア冬季モンスーン百年スケール変動
  • 要旨:

東アジア冬季モンスーンの百年スケール変動は良質なプロキシ記録が少ないため,夏季モンスーンや他地域の気候変動との関係について理解が進んでいない.本研究では,高堆積速度の海底堆積物,冬季に多産する有孔虫種,表層水温に影響される有孔虫殻酸素同位体比を利用して,完新世の中期から後期にかけた百年スケール冬季表層水温変動を復元した.研究海域である下北半島沖の冬季表層水温観測記録は海面気圧分布に基づくモンスーンインデックスと相関関係にあり,冬季モンスーン強度変動を捉えるのに適している.冬季モンスーン変動の百年スケール成分は中国石筍の酸素同位体比で表される夏季モンスーン変動と同調しており,概して夏季モンスーンが強い時期には冬季モンスーンは弱かった.また,夏冬モンスーンの百年スケール変動は過去6000年間を通して太陽活動の変化と同調していた.百年スケールにおける夏冬モンスーンの関係は,氷期-間氷期スケールにおける夏冬モンスーンの関係と類似しているが,完新世の長期トレンドにおける関係(夏季モンスーンが強い完新世初期に,冬季モンスーンも強い)とは異なる.完新世長期トレンドが日射量の季節的な違いを反映していることを合わせて考えると,時間スケールによって異なる強制力の季節性が夏冬モンスーンの関係に影響していると考えられる.さらに,冬季モンスーン変動は,カナダ西部,東赤道太平洋,紅海北部などで報告されている気候記録と変動のタイミングが類似しており,広域にわたる気候リンクが百年スケール変動において存在していたことが明らかとなった.これらの結果は,太陽活動の百年スケール変動が東アジア冬季モンスーンを含む広域の気候変動に大きな影響を与えてきたことを示唆している.