Kamae, Y., Yoshida, K., Ueda, H., 2016. Sensitivity of Pliocene climate simulations in MRI-CGCM2.3 to respective boundary conditions. Climate of the Past 12, 1619-1634.

解説者: 釜江陽一(筑波大学生命環境系)

  • 受付番号:paleoa20160813001
  • 日本語タイトル:釜江陽一,吉田康平,植田宏昭,2016. 鮮新世後期の気候モデリングと各境界条件の役割
  • 要旨:

第四次古気候モデリング相互比較プロジェクトPMIP4に向けて、鮮新世後期(約300万年前)気候のモデル間相互比較プロジェクトPlioMIP2が開始されている。PlioMIP2の気候モデリングでは、境界条件として、大気微量ガス濃度に加え、海峡、地形、大陸氷床、陸上の植生と湖の分布、土壌特性を変更することが求められているが、それぞれの気候再現性への役割は明らかにされていない。この論文は気象研究所大気海洋結合モデルMRI-CGCM2.3を用いた鮮新世後期気候の再現実験、およびそれぞれの境界条件を差し替えた実験の結果を報告している。同一のモデルを用いて実施された第一次PlioMIP実験の結果と比較すると、二酸化炭素濃度は僅かに低く設定しているにも関わらず、全球平均気温が0.6℃高い結果が得られた。それに関連し、これまでの気候モデリングでは過小評価されていた、代替記録が示唆する中高緯度の昇温量の再現性が向上した。境界条件としてのグリーンランド・南極氷床は、高緯度域の気温に影響するものの、二酸化炭素、標高・植生・湖の影響よりも小さい。二酸化炭素の効果は全球平均気温に大きく影響するものの、中高緯度域の昇温を十分に説明しない。標高・植生・湖を変更すると、地域的な応答に加えて大気と海洋による南北熱輸送量が変わり、代替記録が示唆する中高緯度の大きな昇温の再現性に寄与する。本研究での気候モデリングでは検証できなかった、ベーリング海峡の閉鎖や陸面の土壌特性の変更の影響については、後続の研究を待つ必要がある。